個人事業と法人の比較について

個人事業と法人事業を比較する時、どうしても税金の課税方法に目がいくと思います。個人事業にしろ、法人事業にしろ、より節税できる形態を選ぶのがよいのは言うまでもありませんが、個人事業・法人事業を比較する場合の最大のポイントは、その事業の内容がその形態がマッチしているかどうかです。事業・起業=会社経営となんとなくの希望で法人を設立してしまうのも、事業の始め易さだけで個人事業を開始してしまうのも考え物です。ここでは、個人事業と法人事業を比較することで、個人事業だけではなく、法人設立の可能性についても解説をしていきます。

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<個人事業と法人事業 最大の違い>

個人事業のメリット・デメリットは個人事業主開業に書いたとおりなのですが、個人事業と法人事業の最大の違いは、その課税方法にあります。

 個人事業…所得税・住民税が課税される

 法人事業…法人税・法人住民税が課税される

個人事業の場合、売上から仕入れと経費を引いた所得に対して所得税が課税されます。この所得税は累進課税と言って、所得が多ければ多いほど税率が高くなる課税の方法です。

その税率は以下のとおりです。

課税所得金額
税率
控除額
195万円以下の部分
5%
0
195万円超〜330万円以下の部分
10%
97,500円
330万円超〜695万円以下の部分
20%
427,500円
695万円超〜900万円以下の部分
30%
636,000円
900万円超〜1,800万円以下の部分
33%
1,536,000円
1,800万円超の部分
40%
2,796,000円

それに対して、法人事業には法人税が課税されます。この法人税は、一定税率と言って、税率が一定に抑えられています。

所得が800万円以下の部分 22%
所得が800万円以上の部分 30%

所得税・法人税を見比べてみると、課税所得800万円のラインで税率が20% 22%と所得税率のほうが、法人税率よりも高くなります。

<法人は税金面で有利と聞くけれど…>

事業を開業するために、いろいろな人の話を聞いていると、一度は出会う言葉です。「法人は税金面で有利です。」この言葉の正しい意味についてご存知でしょうか。

単純に税率だけを比較した場合、所得800万円のラインで個人にかかる所得税>法人にかかる法人税となっているのが良くお分かりいただけると思います。さらにこの単純な比較に、個人の場合は住民税を、法人の場合は法人住民税を考慮して計算をすると、所得金額1500万円のラインで、個人にかかる税金>法人にかかる税金となります。分かり易く言えば、所得金額が1500万円を越えたあたりから、法人事業のほうが税金面では有利ということになります。

しかしながら個人事業を行っている人の中でも、また起業を志して独立をした起業家も、所得金額1500万円を超える方というのはそんなに多くはありません。(1500万円というのは売上ではなく利益です。)このラインを超えない限りは、個人にかかる税金<法人にかかる税金ということになります。そのため、当初から大きな事業を想定していない場合には、個人事業を選択したほうが税額のうえでは適しているということになります。

この事実を知らないで法人を設立した場合や、思ったほどの利益が出なかった場合は、税金面で不利となることが考えられます。というのは利益が出なくても、また赤字の場合でも、法人には法人住民税の負担があるからです。(個人事業の場合は、利益がなければ住民税は発生しません。)このようなことを考えると、いかに自分の事業の規模や計画が個人事業・法人事業を選ぶ上で大切かが分かると思います。

税率以外の視点からも、「法人は税金面で有利」という言葉について検証をしていきたいと思います。

・法人は所得を分散することができる

法人の場合、自分への給与の支払いは「役員報酬」として経費にすることができます。個人事業の場合、自分への給与として経費にすることはできないので、利益の役員報酬化は大きな利点です。また、役員報酬においては「給与所得控除」が適用できるので、課税対象をさらに減らすことが可能です。

・法人は欠損金の繰越が7年間にわたり適用される

事業の中で生じた欠損金の繰越期間は、個人事業(青色申告時)は3年ですが、法人事業では7年とされています。つまり、ある年度において欠損金が発生した場合でその年度内に控除できなかった欠損金においても、7年間にわたり利益の圧縮ができるというわけです。

・法人は原価償却を任意で行うことができる

個人事業における減価償却は、強制償却と決められていますが、法人事業においての減価償却は任意償却が認められています。例えば、法人事業において決算が赤字の時には減価償却をせず、黒字のときに減価償却をすることで利益の圧縮をすることが可能です。

以上の点が、「法人は税金面で有利」といわれている根拠になりますが、あなたの事業と照らし合わせていかがでしょう。あなたの行う事業規模が税率の分岐点まで達しない場合、また多額の欠損金が発生するような事業でない場合、そして減価償却による影響が発生しない場合でも、「法人は税金面で有利」という言葉が当てはまるでしょうか。大切なのは、自分の事業にあった事業形態を選ぶことです。